Parallel World A.A.

迷惑メール

ある日、いきなり携帯電話に10分に1度くらい迷惑メールが入りだした。それまでは1日に1度くらいだった。まあいいかと思って放っておいたら、いきなり増えた。腹が立つけど、対処の仕様がないので、急いでメールアドレスを変えた。

いったい迷惑メールを発信するプログラムというのは、どういう仕組みになっているのだろう。僕のメールアドレスは14文字もあったのだ。この文字数で、ランダムにアドレスを生成しても、ヒットする確率は天文学的数字になる。アルファベット26文字に数字10文字、それにたぶん記号3文字で合計39文字。それを使ってできるメールアドレスの組み合わせは39の14乗で18,832,349,194,131,700,000,000通りにもなる。単位を数えることさえできない。この数字は今エクセルで計算したけど、最後の方の桁にゼロが並んでいるところを見ると、どうも値が大きすぎて概数でしか計算できていないようだ。

余談だが厚さ0.1ミリの巨大な新聞紙を50回折り返すと、どのくらいの厚さになるか、という話を読んだことがある。計算するとわかるが、0.1ミリ×2の50乗で約1億キロメートルという宇宙的な厚さになる。そのくらい累乗の増え方というのは想像を超えている。

それでも迷惑メールが届くのは、たぶん日本語のローマ字読みの組み合わせを優先したりしてプログラムを工夫しているか、あるいは、どこかから自動的にアドレスを収拾しているかのどちらかだろう。

そこで、とりあえず新しいメールアドレスはローマ字読みのできない不規則なものにしてみた。といっても今までのメールアドレスを逆さまにしただけだ。今までのメールアドレスは、ある言葉のローマ字読みだったので、逆さまにすると全く日本語にならない。逆さまにしただけなので憶えるのも楽だ。これで少なくとも迷惑メール発信プログラムにはひっかからない、と思う。たぶん。

そういえば、ローマ字読みでできた前のアドレスには、間違いメールも多かった。いきなり知らない人から「明日はサッカーの準備をしてくるように」とメールされても、困ってしまう。

またある時には、僕のメールアドレスと同じ文字列で登録しようと思ったら既に使われていたので、いったいどんな人なんだろうかと思ってメールしました、という内容のメールが届いた。

なかなかおもしろい人だと思って、しばらくメールで会話をしたが、全く見知らぬ人と文字列だけで会話をすると、想像力が極限まで増幅されることがよくわかった。相手は男性?それとも女性?若い人?あるいは年配の人?などと、想像力がどんどん拡大するのだ。

たぶん情報量と想像量は反比例するのだろう。直接会って話をするよりは電話のほうが、電話よりはメールのほうが情報量が少ない分だけ想像量が多くなる。そして、たいていの場合、想像する方が楽しい。すぐそばにいるのに、わざわざメールで会話したりするのは、要するに、昔の人が御簾の向こうにいる人に和歌を送ったりしていたのと同じことなのだろう。

でも実際のところ僕は、ほとんど携帯メールで会話をしない。親指で文字入力するのがまどろっこしくて、いらいらするのだ。携帯を持ち始めた頃に、脳の刺激になるから新しいことは左手でしようと考えて、左手だけで入力するくせをつけてしまったからかもしれない。折り畳み式のキーボードでもついていればいいのに、といつも思う。

それとも、もう若くないということなのだろうか。

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