Parallel World A.A.

年をとる

僕は、小さい頃から、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に暮らしてきたので、年をとるとどうなるのかということが、とてもよくわかっています。いや、本当はわかっていないのかもしれません。でも少なくとも知っています。

年をとると体が弱ったり、病気になったりします。忘れっぽくなったりもします。まわりの人がとても大変だったりします。それは全く普通のことなのだけど、年をとった人と接する機会が少ないと、どうも現在がそのまま果てしなく続くような錯覚に陥ります。

年をとるとどうなるかということを知らないということは、少し大げさに言えば、人生の半分しか知らないような気がします。

なまいきなことを書いたけど、実際には、年をとった人の側から見える世界を想像することは、とても難しいことです。少しずつ体が弱ったり、忘れっぽくなったりすると、いったいどんな感情を味わうのだろうかと考えるけど、想像力が及びません。

子どもについても、同じことが言えます。僕はむかし、子どもだったのだけど、子どもの側から世界を想像することは、とても難しくなりました。子どもの頃には、おもしろいことやたのしいことがたくさんあふれていて、同時にこわいことや不安なこともたくさんあったように思うのだけど、その頃に、いったいどんな感情を味わっていたのかを思い出さなくなっています。

昔は自分も子どもだったし、将来は自分も年をとります。でも、どうしても、昔から現在が続いていて、これからも現在が続くように思ってしまいます。

ひょっとしたら子どもの頃に感じた世界の方が豊かだったかもしれないし、年をとってから感じる世界の方が真実に近いかもしれません。現在の自分は、そんな連続して存在する世界の一部を生きているのです。今が全てではありません。

できれば、そういうことを、きちんと意識していたいと思うのだけど、うまくいかないですね。

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