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旧街道#1

旧街道を歩くのが好きだという友達に誘われて、東海道の最後の部分を歩いてみました。

江戸時代の旧街道を忠実にたどって歩くのです。てくてく てくてくと、ひたすら歩きます。
京都三条から蹴上、山科を通って大津宿、最後は琵琶湖にかかる瀬田の唐橋まで。たぶん20キロくらい歩いたと思います。

京都を出る前に、鯖寿司を少しと、おいなりさんをたくさん買って、いよいよ出発です。鯖寿司はとても高いので、少し控えめにしました。

京都の街をはずれて、蹴上からは往来の多い道路沿いに歩きます。途中から車道を外れて、脇道に入ります。排気ガスにまみれて歩いているので、当時のままに旧街道が残っている場所があると、ほっと一息つきます。

しばらく行くと山科です。商店街の中の道をひたすら進みます。江戸時代には往来の多かった旧街道とは思えないような、ごく普通の町並みです。たぶん自分の家の前の道が由緒正しい東海道だということを知らない人も多いのではないかな。

山科駅前で少し休憩。そこから逢坂峠を越えます。国道1号と京阪電車と名神高速が、谷に沿って所狭しと走っていて、昔の面影はまったくありません。大量の車が少しも途切れることなく走っています。昔はたぶん山の中の1本道だったのでしょう。江戸時代の人がタイムマシンに乗ってきたら、きっとびっくりするでしょうね。

蝉丸神社を右に見ながら大津市街に入ります。ちょうどお祭りの日で、20台くらいの山車が次から次へとやってきて、旧街道は、ハレの雰囲気に包まれていました。滋賀県庁前で休憩。地べたに座ってお弁当の残りを食べました。

大津市街には旧街道を示す標識がずいぶんきちんと整備されているので、道に迷うことなく進むことができます。旧街道は裏道なので車の往来も少なく、閑静な住宅地の中を気持ちよく歩くことができました。休日の静かな午後です。連休中で、みんなどこかへ出かけているのか、人通りも少なく、古い建物やお寺もたくさんあって、楽しく歩くことができました。

街を抜けるとNECの工場があって、その横を通って、しばらく進むと突然、石山の繁華街が現れます。急にアジア的な風景が展開したので、とまどいました。このころになると、足は自動的に前へ進んでいて、いったん立ち止まるともう歩けなくなるのではないかなと思うほどでした。

繁華街を抜けて、東へ曲がると瀬田の唐橋。既に日はとっぷりと暮れていたので、今日はここまでにしました。おつかれさま。川面を眺めながら、心地よい疲労を味わうことができました。昔であれば草津宿まで行くのが通常コースなのだそうです。

一緒に歩いた2人は、日本の歴史にとても詳しくて、たくさんおもしろい話をきかせてくれました。おかげで、ずいぶんと楽しく歩くことができました。

それにしても、人間はずいぶんと遠くまで歩くことができるものですね。山科あたりで彼方に見える山を眺めたときに、あの山の向こうにある京都から歩いて来たのだと知って、ちょっとびっくりしました。

止まらないことがポイントだと思います。少しずつでも前に進んで止まらないこと。雑草がアスファルトで固められた道を破って生えてくるときに、細胞分裂を繰り返しながら、ものすごくゆっくりと、でも決して止まらずに圧力を加えていくのと同じことだと思います。ゆっくりと、でも止まらずに前へ進むこと。

そうすると、自分でも気がつかないうちに、いつの間にかできていることは、たくさんあるのかもしれません。

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