Parallel World A.A.

ククです。

みんな元気にしてた?

僕はね、大きくなったから外へ行ってもいいことになったんだよ。まだ小さいときは、外へ出たら危ないし、友達の猫もたくさんいるからダメだって言われてたんだけど、僕があんまり外へ行きたがるもんだから、1日に1回だけ、許してくれることになったんだ。

最初のうちはワクワクして、走り回ったよ。あっちこっちの木に登ってみたり、畑を掘りかえして、体中を真っ黒にしたり、わけもなく全力疾走したり。塀を乗り越えて隣の家まで行ったこともあるよ。

でもそのうちに、だんだん自分で自分の行動をセーブするようになったんだ。

まず、木登りは、あんまり高いところまで登らなくなった。一時はずいぶん高いところまで登れるようになったんだけど、あんまり高いところまで登ると、降りるのが怖いんだ。着地した瞬間に、前足と後ろ足にすごい負担がかかるしね。だから、ほどほどの高さで止めるようになったんだ。

それから一度、隣の家の犬に吠えられて、とってもこわいおもいをしたんだ。突然吠えられたもんだから、これ以上は速く走れないっていうくらいのスピードで家に帰ってきたよ。本当に怖かったんだから。

最近は、あんまり遠くまで行かないし、木登りもしなくなったんだ。外へ行かない日も多くなった。好きなことをしていいよ、とか、自由にしてもいいよって言われると、かえって自由にできないもんだね。何があっても自分で責任をとらないといけないからね。

あれをしてはいけない、これもしてはいけない、って言われている方が楽なのかもしれない。その限界ギリギリのところまで行く充実感があるし、限界があるから逆に自由を感じるってこともある。束縛する対象がなかったら自由っていう概念は成立しないんだ。

束縛があるから自由を求めてハングリーになるんだね。僕みたいに一人っ子で甘やかされて育つとハングリーには、なれっこないんだ。じゃあ、そういう人は人生を楽しめないのかっていうと、そんなことはないよ。だって好奇心があるからね。束縛がないぶんだけ純粋な好奇心があるんだ。好奇心が、僕の人生を前へ進めているんだよ。

でも、ここだけの話だけど、僕が外へ行かなくなった本当の理由は寒いからなんだ。好奇心があっても、寒いのは嫌だからね。やっぱりちょっとハングリー精神が足りないかな。

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