Parallel World A.A. |
最近読んだ本をいくつか ●トーマス・マン「トニオ・クレエゲル」 とても短い小説なのに、読み終えるのに長い時間がかかってしまいました。なぜかというと、この本は毎朝、駐車場で読んだからです。 僕は、ラッシュを避けて早めに家を出ます。そして駐車場に着いて、車の中で、ほんの少しだけ本を読みます。たぶん5分かそこらでしょう。だから今、この本を開いて数行読むだけで、まるで駐車場にいるような気分になります。 岩波文庫では、1952年に第1版が出ています。50年前の日本語はこんなふうだったのかということがよくわかります。当時の翻訳の文体なのでしょうね。 ドイツ語の原本を手に入れて、辞書を引きながら読んでみようかという試みに、ほんの一瞬だけ心を奪われましたが、いったいそんな時間がどこにあるのかということに気がついて、現実に引き戻されました。翻訳のアルバイトをしていた頃を思い出して、またあんなことをしてみたいなと思ったのです。 ●アレックス・カー「犬と鬼」 おもしろくて一気に読みました。前の「美しき日本の残像」もおもしろい内容の本でした。今回は、きちんと調査をして日本の景観や教育や文化について彼の思いや見解を述べています。僕は、ほとんどの点で彼と共通の認識を持ちます。 どうしてヨーロッパの国々で可能なことが、日本では不可能なのかということは、僕がいつも持ち続けている謎の一つです。特に景観に関しては、途方もなく大きな諦めが僕を支配します。やっぱり教育なのかな。政治なのかな。社会システムなのかな。 残念ながら、この本には答えが書いてありません。たぶん、答えは複合的で構造的で、要するに絡まり合った様々な要因が、お互いに作用して今の状況を生みだしているのでしょうね。 ●青山拓央「タイムトラベルの哲学」 なんと著者は1975年生まれです。軽い読み物のつもりで寝る前に読んでいたのですが、なかなか内容が難しくて、ちょっと読みごたえがありました。時間とは何かということをわかりやすく追求していて、でもやっぱりわかりにくくて、そこがまたおもしろくて、寝る前に頭の体操をしているような気分になりました。初めて知った事実もたくさんありました。 僕はこういう本が大好きです。 |
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