Parallel World A.A.

ククです。久しぶり。

元気にしてた?

最近はお父さんもお母さんも帰りが遅くて、僕の夕食が遅いんだ。お気に入りの「飽きのこない5つの味」シリーズの夕食を楽しみにしているのに。

でも今日は土曜日。土曜日はお父さんが家にいる。そして部屋を掃除するんだ。掃除するときには窓を開けるだろう。チャンス到来。今日も、お父さんが油断したすきに、部屋を飛び出して庭を冒険したよ。

いつも部屋の窓から覗いているだけの外の世界へ、実際に足を踏み入れる快感といったらないね。

窓から見ているのと、実際にそこへ行くのとは100倍くらい違う。土の感触、木のにおい、葉っぱの味、どれも窓から見ているだけではわからないことばかりだからね。

でも、お父さんは心配して追いかけてくるんだ。僕は土の上でごろごろして汚れるし、家のまわりには猫がたくさんいるからね。猫っていう動物は、僕とよく似ているみたいだから友達になりたいんだけどな。でも、お父さんは許してくれないだろうな。まったく過保護なんだから。

しばらく走り回って、お父さんと鬼ごっこみたいになるけど、結局お父さんは僕を捕まえるんだ。お父さんは、僕を苦労して捕まえているのに、「猫のくせに人間に簡単に捕まるなんて、なさけない」なんて言ってるよ。僕は、あんまりお父さんが真剣に追いかけてくるもんだから、わざと捕まってあげているのにね。

おっと、さっきからお父さんのことばっかり言ってるから、少しお母さんのことも教えてあげる。

お母さんは、仕事から家に帰ってきたら、10秒以内に缶ビールを開けるんだ。プルリングを引っぱったときのプシューっていう音がいいんだね。何だか労働者っていう雰囲気がする。

それから夕食を食べきれないくらい、いっぱい作って、いっぱい食べるんだ。食べるのも早いよ。早く食べているようには見えないけど、いつの間にかお皿が空になっているんだ。あまり噛んでいないんだね。

そして、最後のひとさじを口に入れて10秒以内にバタッと横になって、苦しそうに「食べ過ぎたー」って言うんだ。そんなに苦しいんだったら、途中で止めればいいのに、絶対に止めないんだよ、これが。

それにくらべて、お父さんは食べるのが遅いし、あまり食べないんだ。疲れているのかな。それとも生きるエネルギーが少ないのかな。もともと、お父さんは食欲とか物欲とか、そういったものが少ないんだ。

いいことなのか、悪いことなのか、僕にはよくわからないけどね。

お母さんには「ど・う・し・て・も・食べたい」とか「ぜ・った・い・に・欲しい」っていうものがたくさんあるみたいなんだけど、お父さんには、そういうのが少ないんだね。

お父さんは無意識に自分の欲望を押さえつけているのかな。もしそうだとしたら、ちょっと寂しいね。でもひょっとしたら本当に欲望がないのかもしれない。いったいどっちが本当なんだろう。

そうそう、横になったお母さんは、そのまま寝てしまうわけではなくて、しばらく横になったら昔の宇宙戦艦大和みたいに、すぐに無傷で復活するよ。念のために付け加えておくね。

じゃあまたね。

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