Parallel World A.A.

仕事

最近、仕事が忙しくて、朝早くから夜遅くまで、せっせと働いています。いけないな、と思いながらも、することがたくさんあるので、仕方がありません。

しごと

目覚めた瞬間に、頭の中で、その日にしないといけない仕事のリストをパラパラとめくります。いけないな、と思いながらも、無意識にしてしまうので、仕方がありません。

シゴト

朝のラッシュを避けて早めに家を出ます。駐車場に車を止めて、しばらく本を読みます。さて、と頭を切り換えて、職場まで歩いていく間に、別の人間に変身します。僕はBの世界に足を踏み入れます。普段の僕がいるのはAの世界、仕事をしている間はBの世界ということにしています。単なる認識の方法です。いけないな、と思いながらも、そういうふうに認識していないと、社会と僕との間にある微妙なズレの調整に、ものすごく神経を使って疲れるのです。

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Bの世界では、結果が全てです。プロセスの不合理性や微妙な感情の発露は関係ありません。もちろん、仕事を進めるとき自分なりの方法にこだわったり、忙しい合間に一息ついて穏やかな感情を味わったりすることはあります。でも基本的に効率を最大限に尊重します。いけないな、と思いながらも細かなことにこだわっている余裕がありません。人生は些細なことから成り立っているというのは、Aの世界の価値観です。

SIGOTO

問題なのは、Bの世界からAの世界へ戻るときです。朝とは反対に、駐車場へ向かって歩いていく間に、ズレを調整しながら元の人間に戻るのですが、長時間Aの世界にいると、なかなかうまくいきません。ベタッとしたBの世界が、疲れた身体からはがれないのです。いけないな、と思って長時間労働はやめようと決意する瞬間です。

できればAの世界とBの世界が一致すればいいのですが、社会と僕とのズレは、そう簡単にはなくならないような気がします。でも、仕事を始めた頃に比べると、数々の痛ましい経験を経て、ズレはずいぶんと小さくなりました。

いいことなのか、悪いことなのかよくわからないけどね。
<絵:小松海岸>

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