Parallel World A.A.

山登り

父親が登山が好きなので、小さい頃、よく山へ行きました。中学校くらいまでは、本当によく行っていました。雪山にも行ったし、剣山なんて、いったい何回登ったのか、わからないくらいです。18歳のときには西穂高にも登りました。僕の家族にとって、山登りはテレビを見るのと同じくらい、日常生活の一部だったのです。

一人で生活を始めてからは、全く行かなくなっていたのですが、最近、父親と一緒に生活をするようになって、また山へ行くようになりました。久しぶりに行くと、昔を思い出します。昔と違って、今は高速道路があるので、高知県や愛媛県の山へ行くことが多くなりました。特に愛媛県に、いい山が多いですね。

こういうのを再発見というのでしょうか。気の合う人たちと一緒に山へ行くのは、本当に楽しいイベントです。頂上に登って、みんなでおいしいワインを飲む瞬間が大好きです。たぶん、登山は、僕にとってあまりにも身近すぎて、本当の価値がわからなかったのかもしれません。もったいないですね。

今でも憶えているのですが、中学校の時に雪山へ行って、斜面を垂直に降りていて足を滑らせてしまったことがあります。滑落したときのために、何度もピッケルの使い方を練習していたのに、いざ滑り出したら、きちんとピッケルと使うことができなくて、近くの木に足を引っかけて何とか体を止めることができました。こんなことは、山に登っている人にとっては、たぶん大した体験ではないのだろうし、もっともっと極限的な話をたくさん聞いていたので、当時の僕もたいしたことではないと思っていたのですが、今考えると、山でしかできない貴重な体験だったように思います。

安全で配慮が行き届いた社会に暮らしていると、身の危険を感じるようなことはめったにありません。体の危機管理能力のようなものが、衰えているように思います。山へ行くと、そういう動物的な勘のようなものが、冴えてくるのかもしれませんね。

<絵:Kさんの設計した家 #2>

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