Parallel World A.A.

僕はクク。この家にやってきてもう6ヶ月くらいになるかな。ぼくのお母さんは、ぼくのことを「ククりゃお」とか「ククすけククおさん」とか「ククきち」とか、その時の気分で好きなように呼ぶもんだから、いったい僕の本名はなんなのか、よくわからないんだ。

お母さんは、パンやケーキを焼くことを仕事にしていて、きのうなんか僕にネズミの形をしたパンを作ってくれたんだよ。僕はパンが大好きだし、その大好きなパンがネズミの形をしていたもんだから、一目見た瞬間に、僕の野性モードにスイッチが入ってしまった。パンを持って、自分でもわけがわからないくらい興奮して走り回って、テラコッタタイルでできたキッチンの床をパンくずだらけにしてしまったんだ。時々、僕は人間モードから野性モードにスイッチが切り替わるみたいなんだ。自分でもよくわからないんだけどね。二重人格なのかな。本当の僕は人間だと思っているんだけど。

朝の5時とか6時頃にも、なぜか野性モードにスイッチが入ることが多くて、寝ているお父さんやお母さんのベッドの上を走り回ってしまうんだ。自分ではどうしようもないんだけど、お父さんは眠るのが大好きだから、睡眠を邪魔されると怒って僕をキッチンに閉じこめてしまう。おまけにそのまま、また何事もなかったかのように寝てしまって、僕がいくら声を出しても起きてくれないもんだから、とっても困るんだ。

それから、お母さんは僕にいたずらするのが大好きで、後ろ足をつかんだり、僕の目の前で手を激しく動かしたりする。そんなことをされたら、僕の野性モードにまたスイッチが入ってしまうんだ。で、いきなりお母さんの手や腕に手加減なしで噛みついたりして、血が出るくらい傷をつけてしまうんだ。ごめんね。

僕の大好きな場所は、冷蔵庫の上や食器棚の上。小さいときは登れなかったけど、何度も挑戦して登れるようになったんだよ。僕は何でもとりあえず試してみるんだ。僕が始めて冷蔵庫の上に登って下を見ていたら、お父さんとお母さんは、いったいどうやって登ったんだろうって、とってもびっくりしてたよ。別にたいしたことじゃないのに。とにかく人生は試してみることの連続だ。これは僕の人生訓。すごいだろう。そう言えば、「試してみることに失敗はない」って誰かが言ってたよ。みんな変化は嫌いだけど試してみることは大好きなんだって。

じゃあまたね。

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