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山の郵便配達

徳島で見れない映画を見る会で「山の郵便配達」を見ました。徳島で見られない映画が見られるこの会は貴重です。

山の郵便配達は、1980年代の中国山間部で、歩いて郵便配達しているお父さんが、引退をして子どもに仕事を引き継ごうと、一緒に3日間歩いて配達するときの出来事を描いているだけの映画です。とてもわかりやすい映画です。刺激的ではないのですが、ある種の感慨がじわっと浸みだしてくるといったタイプの映画です。映像の見せ方や音響も奇をてらったところは全くありません。

僕が一番感心したのは風景の美しさです。どのシーンも構図がきちんと決まっていて、スクリーンの隅まで美しいのです。80年代と言っても、日本で言えば60年代くらいの感じでしょうか。見ていて懐かしい感じがしました。こんな生活なら環境にやさしいだろうな、などと考えました。何しろ歩いて郵便配達をするのですから。

必要なもの以外、人の作った物が何もない風景というのが、こんなに美しいのかと思いました。なぜでしょう。看板や標識や電線や車やガードレールのない風景は、こんなにも美しいのです。

人の作った物には意図があります。看板には宣伝しようという意図があるし、ガードレールには事故を防ごうという意図があります。ゴミを捨てる人の意図は言うまでもありません。そういう押しつけがましい意図や、悪い意図が、嫌悪感を増幅させているのだと思います。僕の周りを見ても、余計なものが多すぎるし、デザインされていないものが多すぎます。これは、風景に限らないのだけれど、新しいものを取り入れるより、今あるものをなくした方がずっとよくなることがたくさんあると思います。

もっとも、今の中国は、すっかり変わっているのかもしれないですね。何しろアジアの国ですから。

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