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歯の手術

歯の手術をしました。外来でできる簡単な手術です。簡単とは言っても、左上の歯茎を3センチくらい切って中の骨を削って上顎にある膿胞を摘出するという、ちょっとした手術です。こうして文章にすると、ものすごく大変で痛そうに聞こえますね。でも実際には局部麻酔をするので、痛くありません。時間も1時間くらいで終わりました。

「では、始めます。」と先生に言われて、返事もできず、ただ何が起こっているのか想像するだけの状態で横たわっていると、自分の体が物質になったみたいで、と言っても人間の体は実際に物質なのですが、妙に分離している感じを味わいました。「今、地震が起こって、みんな逃げ出して、傷口が開いたまま放っておかれたらどうしよう」などと、ほとんど起こる確率のないことを考えたりしたのは、やはり少し不安だったからでしょう。つくづく麻酔のある時代に生まれて良かったなと思いました。

先生は、手術中に今何をしているかを、とても丁寧に説明してくれました。よくある手術なので、たぶん先生にとっては、折り紙で鶴を折るくらいに簡単な治療なのかもしれません。でも、僕にとってはもちろん初めての経験なので、リアルな状況の説明は、なかなか迫力がありました。

手術が終わった後で「腫れますよ」と言われて、そうだろうなとは思っていたのですが、次の日、僕が想像していたより3倍くらい大きく腫れました。顔がミルキーのペコちゃんか、森の熊のようになってしまって、物を食べるのも大変。しかも左側だけ腫れたので、顔がおかしくて自分で笑ってしまいそうになりました。でも笑うと傷口が開いて出血するのです。仕方がないので、鏡をまじまじと見ないようにしていました。

それにしても、自然治癒力というのはすごいですね。1週間もしないうちに、すっかり元通りになりました。メスやドリルを使って、あれだけ無茶なことをしたのに、元通りになるのですから、たいしたものです。

どうやら人間の体は、単なる物質ではないみたいです。

<絵:合唱>

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