Parallel World A.A.

映画 NO MAN'S LAND

たまたま中立地帯の塹壕で遭遇してしまったボスニアとセルビアの兵士が、お互いに身動きがとれなくなって国連軍に助けを求めて、そこへマスコミがやってきて・・というちょっと変わった戦争映画です。

この映画に出てくる戦争は、日常の中にあります。主人公のボスニア兵士は、軍服の下にストーンズのTシャツを着ているし、もう一人のセルビア兵士は銃を撃ったこともない。二人とも、どうして戦争をしているのかもわからない。敵同士という一発触発の状況で、感情が高ぶると相手を銃で撃ったりナイフで刺したりするのに、一方で高校のクラスメートが共通の知り合いだったりする。監督がボスニアの人なので、徹底的に内容がリアルなのです。

映画では、何もできない国連軍や、大騒ぎするだけのマスコミが、少しおおげさに、そしてちょっとユーモラスに描かれています。フランス人の国連軍やドイツ人の地雷除去専門家、イギリス人のマスコミなどが、国民性をまじえながら典型的に描かれていて、笑いを誘います。それぞれが自分たちの論理で動けば動くほど、事態はどんどん悲惨な状況に向かっていって・・・(ここから先はパンフレットにも載っていないので、自分で見てくださいね)

そして、そういう何もできない人たちを笑いながら、おもしろい映画だったね・・と言いながら、みんな映画館を去っていって結局何もしない。何の葛藤もなく、当然のように自分たちの論理で動く日常へと帰っていきます。そうです。実は、映画を見ている僕たちは、映画に登場する国連軍やマスコミと全く同じなのですね。笑っていた対象が、実は自分だったというわけです。

映画を見た後、突然だけど、そしてあまり深い連想ではないのだけれど、そういう滑稽で矛盾した自分の存在を昇華するためには、やっぱり三島由紀夫かな、などと直感的に感じました。危険だけどね。

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