Parallel World A.A.

ゆっくり

仕事があまりに忙しくて、することがあまりにもたくさんあるので、今日は朝から、ちょっとした実験をしてみました。

それは、意識してゆっくり行動するという実験です。

歯を磨いたり、服を着替えることから始めて、全ての動作を、ふだんより、ゆっくりていねいにしてみました。

すると不思議なことに、時間がゆっくり過ぎていって、しかも遅刻しませんでした。
まるでアルゴリズムをたどるように、一つひとつ確認しながら意識してゆっくり動くことで、普段とはちょっと違った感覚を味わいました。

自動車も、ゆっくり運転してみました。

すると不思議なことに、まわりの車もゆっくり走っているように感じました。競争するから、まわりの車もどんどん速くなるのです。僕は今、不幸なことに、あと1点で免許停止になるので、ちょうどいいかもしれません。

仕事も、意識して、ゆっくりしてみました。

すると不思議なことに、普段よりたくさんのことをしているような気がしました。

実は「急いでいるときほどゆっくりと」は、仕事で役に立つ方法の一つです。例えば、10分以内に仕上げなければいけない用件ができたときは、自分で時間をゆっくり区切りながら進めるようにします。主観的な時間は、ゆっくり進めることができるのです。「アキレスと亀」のパラドックスみたいに、10分を5分、5分を2分30秒、2分30秒を1分15秒、と半分ずつに区切っていけば、いつまでたっても10分にたどり着かない、なんてことは実際には起こらないけど、そうやって10分以内に仕上げてしまいます。

ところが、実際には、ゆっくりとする実験は、あまり長続きしませんでした。

やってみるとすぐにわかるけど、ゆっくりと、という意識が続かないのです。

例えば、食べ物をよく噛んで食べる、というような単純なことでも、実は意識し続けることが難しくて、ついつい飲み込んでしまうのと同じです。意識をしていないと、すぐ、いつもの早さに戻ってしまいます。

ただ、僕は意識の続く範囲で、ゆっくりとする実験を続けます。日常を味わっているという感覚を持ちたいし、何となくだけど、ゆっくりとする方が、逆に多くのことができるような気がするからです。

<絵:吉野川#4>

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