Parallel World A.A. |
てっちゃん 僕にはずーっと封印していた過去があります。それは僕が鉄道マニアだったという過去です。別に封印しなくてもいいのですが、長い間、鉄道マニアであることを止めていたのです。鉄道マニアであったことさえ忘れていたのです。頭の中から追い払おうと努力していたのかもしれません。でも先日、職場の人で東京から来ている人と一緒に飲む機会があって、その人から「実は僕は”てっちゃん”なんだ」と告白されて、それで僕も思い出しました。実は、僕は大学のときに鉄道研究会に属していたのです。 そこには、すさまじい「おたく」の学生がたくさんいました。 でも、何だか暗い学生時代になりそうな気がしたので1年で止めました。どうもてっちゃんは、女性にもてないようなのです。合コンをしているときに、いきなり「C51の動輪の直径って、いくらか知ってる?」と女の子に話しかけたり、「僕の彼女は、顔がアズキ色なんだ」と言って、手帳から阪急電車の写真を取り出したりするのですから、無理もありません。(両方とも人から聞いた本当の話です) それで僕は、大学内のサークルよりも大学の外の英会話学校なんかに行くようになりました。鉄道研究会には女性が一人もいなかったのに、英会話学校は女性ばかりだったのです。もちろん英会話学校に行ったのは、そういう理由だけではありません。 もう結婚したことだし、妻も自分のことをおたくだと言っているし、僕も遠慮せずにてっちゃんに復帰しようかな。 それに、たぶんどんな人でも「おたく」的Iなものを一つ以上は必ず持っているだろうし、僕はもともと、そういうのを発見して、その人の「おたく」的な話を聞くのが結構好きなのです。 <絵:土手 #2> |
HOME | BACK | NEXT |