【午 睡】

炎天の  地上花あり  百日紅          
             高浜虚子


風が花を揺らす。
赤い花びらを。
赤い睫毛を、
揺らす。

ンん?


重たそうに持ち上げられた睫毛の間から碧の瞳が覗く。
お目覚めか、お頭。一人か?

んー。

珍しいな。あんたが一人で昼寝なんて。

んー

まだ目覚めきってないのだろう、シャンクスの応えは間延びしていた。


部下達を連れてないのはともかく――
シャンクスがその気になれば、付いていける者などいない――
守護神(乃至は背後霊)よろしくシャンクスにつきまとう黒猫の姿まで無い。


カッツェはどうした?

うん、一緒に来たんだけどさ。
アイツ、枝から落っこちてさ、
なんかえらく不機嫌になってどっか行っちまった。

それは…
重畳とは口には出さず、副船長は密かにほくそ笑む。

ちゃんと助けてやったのに。

まぁ猫にだとて孤独になりたい時もあるだろうさ。

心にもないことを嘯く副船長は、
猫を、より正確には猫のしくじりを嗤ってはいけないという世界の掟を、とりあえずは守った。

せっかく、昼寝にもってこいの場所めっけたのに。

言いながらも、ごしごしと目をこする。
まるきり、今にも睡魔に負けそうな子どものようだ。

そのうち戻ってくるさ。
まだ寝てていいぞ。

んー。

睡魔の後押し故だろう、不気味なほど素直なシャンクスは
髪に差し入れられる指にも、ほとんど無反応だった。

それは、その指の動きに邪な部分がなかったせいでもあった。
時に警戒警報を発動させてくれる黒髪の副船長は、
それでもシャンクスにとって誰よりも安心して素をさらせる相手なのだ。




赤髪は無防備に眠る。
花の赤い影を全身に散らせて。
黒き守護者に見守られて。



――こんな時もいやではない。

この花よりも紅く染まったあんたの肌を暴くのも
あんたのきつい碧の目に射られるのも、とても好ましい。

けれど今は――



あんたの睡りを守ろう。
どまでも青い空の下、
艶やかな木肌を褥に、
ふるふると揺れる紅の花びらを天蓋に、
この上なく豪奢な赤髪の午睡の時を。

黒髪の副船長は
花より紅い己の船長の髪を
この上なく丁重に梳いた。







☆ Fiddlers Greenのうきち様から
いただきました百日紅の上で昼寝するシャンクスに刺激され、
ちびっと書いてみました。
とっても暑苦しいSS(^_^;)



ささやかなお礼でございます。


2006.9.6

背景画像は、私が撮影した花百日紅です。
まんまだと、ちょっとえぐいので、
「素材の大国」様の「中国の伝統色」コーナーで
教えていただいた「紫薇花(ツーウェイホワ)」を敷きました。

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