| Jealousy 2 |
海賊の労働の基本は、略奪である。 実入りは、規約に則って、船長以下全員に分配される。 値付けをするのは、新参ながら一番の目利きと認められたベン・ベックマンだ。 公平に正確に値を見積もり、船長の分と幹部達の分を取り分け、残りを公平に分配していく。 彼のやり方はきれいなもんだと全員に認められている。 シャンクスの獲物の取りようは、かなり偏っている。 剣にこそ拘るものの、きれいだと言うだけで宝石よりただのガラスをとったりする。 ミドル・ブルー産のガラスは、それなりに高価なものとはいえ、宝石類とは桁が違う。 エメラルドやルビー、サファイアなどの宝石類を一番にとる権利は、船長にあるというのに。 「だって、こっちの方がキレーじゃねえ」 「それならそれで、ちゃんとしまえ」 この一年で、ベンの物言いはかなり荒っぽいものになっていた。 海賊団の中で浮かないためでもあり、ベン自身がそれまでとは一八〇度異なる己を目指したためでもあった。 「いくらきれいでも、欠けたりしたら、値打ちが落ちるだろうが」 「キレイはキレイだもん。別にいいじゃん」 俺は別に養わなきゃなんない家族がいるわけじゃなし、売っぱらう必要もないしさ。 そう言い捨てて憚らないシャンクスのために、黙って船箪笥を誂えたのは、ベンだったりする。 海賊の金遣いは荒っぽい。 金が入れば入るだけ使ってしまう。 入らなければ、港に入っても空きっ腹と己の膝小僧抱えて眠る羽目になる。 この海賊団も、例に漏れない。 それでも、不思議に出航のための金に困った風はない。 あまり実入りの無かった航海の後でもだ。 「どうやって、次の航海のための金を確保してるんだ?」 あまりにザルな船長に代わって(見かねて、とも言う) 赤髪海賊団の会計を引き受けてしまったベンは、 ずっと首を傾げ続け――ある日、とうとう聞きただした。 幹部たちばかりが集まった酒の席だった。 改まりすぎない方がいいと思っての選択…というより、思わず零れてしまったのだが。 一瞬気まずい沈黙が落ちた。 ほぼ全員の視線は明後日の方へ泳ぐ。 「…新参の俺が口を出すことではないとは思うが」 出過ぎた発言だったと後悔したベンの謝辞に、 すこぶる居心地の悪い思いをした者多数…… |
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しかし、全員に含まれない者が一人、 「そんなの、お頭が商品になりゃ一発で」 「ボウシッ」 周りの者の制止は間に合わなかった。 「そーゆーことー」 また火に油を注ぐヤツがいる。当の本人だ。 「そうさー、俺は高いんだぜぇ」 「こないだの街の総督も、お頭に夢中でしたもんねぇ。 同じ目方の血の色珊瑚より値打ちがあるとか言っちゃって」 「とーぜんとーぜん、なにしろ俺はさーー」 固まりきったその場の空気にまるきり気づいちゃいない 酔っぱらい二人の話は堕ちていく一方で―― そーっと幹部連中は一人減り二人減り、最後に残ったヤソップが 「お前も来いっ」 ボウシの首根っこを掴んで去った。 「なんでぇ?みんな行っちまいやがんのーー」 一人残った酔っぱらいは、部屋の隅で押し黙ったままのベックマンを視界にとらえる。 「いたかーーベン。お前も聞く?俺のさー」 「止めてくれ」 「何だよ、聞きたくねぇの?俺の」 「違う」 「何?何が違うって?」 「船のためにあんたがカラダを売るなんてこと、止めてくれ」 ベンにしては珍しいストレートな命令形。 けれど、その語調は沈痛で、シャンクスもマジに受けて考え込む。 「なに?お前、俺が他のヤツとセックスすんのヤなわけ?」 視線を伏せたまま、それでも、思い切り縦に下ろされる頭。 「うーん、困ったな。 あれって、元手もかかんないし、けっこう効率良い手なんだけどなぁ」 趣味と実益兼ねてると言うかさぁ。 のほほんとした声は、本音だった。 「俺達は海へ出るんだ、そのためなら、なんだってするっ」 港の有力者から金を巻き上げることも、 総督府の面々に美人局を仕掛けることも、 シャンクスにとってはただの手だてだ。 使えるものは使う、それが海賊だとシャンクスは理解している。 それが我が身だろうと同じこと。その程度で傷つくような柔な精神でもない。 「あー、でも、心配しなくていいぞ。 ちゃんと相手は選んでっから。 病気持ちだの、アブない趣味のヤツだのは避けてるからな」 「それでも…イヤだ」 のどかに言い募るシャンクスの背に、ベンの腕が回される。 この一年でずいぶんと逞しくなった、けれど今、細かに震える腕。 「……どうしても必要なら……俺がやるから…だから」 「バーカ。そんなに体固くして言うこっちゃねえよ。」 「第一、そんなでオトせるかよー 俺様はなぁテクニシャンなんだぜ、おめーと違ってな」 「…なら―― あんたがそんなことしなくても、稼げるようにするから。 だから―― 」 「言ってろ、バカ」 |
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悪魔のような謀略と万全の布陣をもって、 常勝の名が赤髪海賊団に冠せられるようになるのは、 それから僅か半年後のことだった。 |
| オマケをつけました〜 |
| 2002.9.22 |
☆ ……そか、副の万全の備えにはシャンクスのカラダがかかってるのか…… そりゃ必死にもなるわな〜さぞかしさぞかし〜 ということで(^_^;) く、くだらんーと言われそうですが、私は楽しゅうございました〜 |
このページの壁紙とわんこのカットは「Moon Tears」
様からいただきました。
哀愁の後ろ姿が、ベンちゃんにぴったりでしょ(^O^)
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