Jealousy   




    



 凪とはいえ、船長が甲板にいない。

 おかげで、副船長たるベン・ベックマンは、
それぞれの部署の責任者の愚痴を山ほど聞かされる羽目になった。
 厨房を預かる料理長を筆頭に武器担当、
火薬庫の係、新入りをまとめる役の若手まで。

「おまえら、わざとか」と言いたくなるほど次から次へと言ってくる。
 なぜ、船長を捜して言わないと聞けば、全員がはてと首を傾げて断言してくれる。
「すぐ話の通じる副船長が目の前にいるのに、どうしてそんな手間をかける必要がある」


 さすがに頭に来て、ベックマンは船長を捜した。
いや、探すまでもなかった。船長室に行っただけなのだから。

 案の定、シャンクスは船長室にいた。
 船長室で、寝こけていた。
 それはいい。良くはないが、まぁいい。
 すぐそばにベッドがあるのに、どうして床に寝てるんだというのも、
この際不問にしてもいい。

 だが、無防備に眠っているシャンクスの傍らに、
乳母やよろしく座り込んでいるのが、猫のカッツェというのは、どういうことだ。
 しかも、そのしっぽはぱたりぱたりとシャンクスの赤髪に触れている。
まるで、撫でているように。



 ベン・ベックマンは、少なからずむっとした。

「どけ、カッツェ」

 たださえドスの利いた声をぎりぎりまで低くして
赤髪海賊団きっての強面、凶悪と評される目つきでもって睨み据える。
「ソレは、俺のものだ」

 カッツェは動じない。
「じょーだんっ。コレは、アタシのものよ」


 一人と一匹は睨み合った。
 そりゃもう、お互い雷をバックに背負って一触即発。
間には、火花が散る〜状態。







 そんな剣呑な空気に、シャンクスが反応しないはずがなく、
「…ンだよ…うるせーな…」
 もぞもぞと起きあがる。
 慌てて、固まった一人と一匹に目をやり、
「…なん…だ…おまえら…なかよし…でやんの」
 半分寝ぼけている。妙に舌足らずな口調だ。
そして、ぼーとした顔のまま、いきなり次の行動を起こした。

「俺もまぜろ」

 右腕でベンの首をはさみ、左腕でカッツェを抱え(たつもりで)、
もろともに突っ伏す。
――床に絨毯が敷いてあったのは幸いと言うべきだろう。


「シャンクスっ、顔っ」


 ベンが慌てて引き起こしたときにはもう、シャンクスは熟睡していた。
すぅすうと不眠症の人間が心底羨みそうな、安らかな寝息をたてて。


 ほっと安堵して、ベックマンはそっと船長を絨毯の上に下ろした。
ベッドから上掛けを取って掛けてやる。

 ばさりと落ちた鮮やかな赤い髪が、頬にも赤い影を落とす。睫毛の影も重なる。
 年齢に比して若く見えるとはいえ、長年潮風に晒されてきた肌には細かい皺が刻まれ、
顎には半端に伸びた髭。


 一人と一匹は知っている。
 今は閉ざされているその瞼の下には、きららかな碧の瞳があることを。
その瞳が、どれほど生気に満ち、回りの者を誘い込むかを――








 もう習い性となってしまった溜め息をつき、ベン・ベックマンは肩をすくめる。
 その視線は、傍らでずうっと、一部始終を見ていたカッツェのそれと交わった。
互いの位置の中間点で。

 そして、暗黙の合意の下、一人と一匹は船長室を出た。
 その頭上には、そろって「やれやれ」という単語が
特太ゴチックで貼り付いていた。


 後には、至極平和に惰眠を貪る赤髪海賊団の大頭ひとり――






2002.9.10





☆ ホント短い……
おまけにテーマつうもんもない…
黒猫のカットだけのよーな気が……
えーーと…(^_^;)
ここはひとつ、リハビリの一環と言うことでご寛恕のほどを〜

しかし、鉄の自制心を誇る(はずの)副船長が
カッツェ相手だと嫉妬心むき出し(^^)
ああ、大人げない〜でも可愛い〜人も猫も〜
こういう仲は、何と言うのかしらね

このページの猫と窓のカットは「Play Moon」様からいただきました。

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